ツン×ツン

部屋に一人。膝を抱えた子供を見つけた。見つけた、というのも変な話だが。
自身の部屋は家主の部屋の隣。その家主がここ数日ずっと土蔵に籠っていたのは知っていた。ついでにここ最近急に気温が下がってきている。風邪でもひけばいいと思ってはいた、が、体が丈夫なだけがとりえのヤツのことだ。そうそう起こりえないだろう。……そして彼女らを心配させるのも本意ではない。だから、仕方なく、そう、仕方なくだ。そろそろ土蔵から引きずり出しに行くかと向かった矢先の事だった。

扉を開けてもこちらを見ない。無反応なまま座り込んだそれに何故か少し、苛立つ。
だからだろう、こんなことをしたのは。
そのまま後ろから抱え込むように抱きしめた。
その体勢で二人、沈黙。ああ、おかしいなんて自分が一番よくわかっている。そら、そいつとて固まっているだろうに。

「おまえなんてきらいだ 」
ぽつりと、子供が零す。その声はどこか迷子の幼子が泣くのを堪えているかのような。
何故。嫌なら殴ってでも逃げればいい。それでも、何もしないのは諦めているからかそれとも……いや。それは、それだけはありえない。
「そうだな」
いくら別の存在になったとはいえ、それでも己自身であることは変わりない。
そんなものに、好意なんてものが抱けるはずがない。
けれど離れる気配のないそれに、そのまま抱える腕に力を込めればひくりと反応するからだ。愛しいなど。気の迷い、気のせいだと己に言い聞かせ。

「私も、嫌いだ」

しかし耳元で囁いたそれは、どこか甘く落ちて。





 * * *





「おまえなんてきらいだ」

違う、そうじゃない。そういうことを言いたかったんじゃ、ない。
ここのところずっと悩んでいた。部屋に戻るに戻れなかったのはそう、俺の勝手だ。みんなが気にかけてくれていたのは知っている。
けれど、それでも。気付いてしまった以上はどうしようもなかった。
ひとのいる時であればまだ、平然としていられた。二人きりでも、そのままでいられると思っていた。
だけど。なにかが違って、少しずつ変わっていく空気に耐えきれなかったのは俺だ。
良い、傾向だったのかもしれない。ただ、それはあまりにも優しい毒だった。
だから、逃げた。だというのにこいつは。
追いかけるな期待をさせるなアンタが、俺を、好きだなんてことはありえないんだから。
俺があいつを、その、好きだっていうのはいいだろ。ほら。仕方ないじゃないか。目の前にあんな――……
そうじゃない。この体勢は、この状況はいったいなんなんだ。
逃げないと。そう思うのに体が動かない。触れる温度が心地よくて。離れたくないとすら、思う。駄目だと、こんなのはおかしいと思うのに。
何故、と問うことすらできなかった。

2012/10/11